PLATEAU(プラトー)とは?3D都市モデルの仕組みと航空写真測量の役割を解説

国土交通省が進める「Project PLATEAU(プラトー)」は、全国の都市を3Dデータで再現する取り組みです。2020年の開始以来、3D都市モデルの整備は329都市まで広がりました。2026年7月には今後の方針を示す「PLATEAUビジョン2026」も公表され、注目度はさらに高まっています。
3D都市モデルの土台を支えているのが、航空写真測量で取得した地形や建物のデータです。本記事では、PLATEAUの概要と3D都市モデルの仕組みを整理し、整備に航空写真測量がどう関わっているかを解説します。
防災やまちづくりでの活用分野にも触れるので、自治体や事業者の方はぜひ参考にしてください。
PLATEAUとは|国土交通省が進める3D都市モデルのプロジェクト

PLATEAU(プラトー)は、国土交通省が主導する3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化のプロジェクトです。都市の建物や道路、地形を三次元のデータとして再現し、まちづくりや防災などの課題解決に役立てることを目指しています。まずはPLATEAUの目的と、従来の3D地図との違いを押さえておきましょう。
PLATEAUの目的と始まり
PLATEAUは2020年度に始まったプロジェクトです。スマートシティをはじめとする、まちづくりのデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるために立ち上げられました。3D都市モデルを、都市のデジタル・インフラとして全国に整備する点が特徴です。
開始当初は先導的な実証の位置づけでしたが、2022年度には社会基盤として実装するフェーズへ移行しました。同年度には、地方公共団体の整備を支援する補助制度も創設されています。2025年度末時点で、3D都市モデルの整備は329都市に達しました。
「カタチ」だけでなく「意味」を持つデータ
PLATEAUの3D都市モデルは、建物などの形状を再現するだけのデータではありません。建物一つひとつが、名称・高さ・用途・構造といった属性情報を持っています。国土交通省は、形状に加えて意味もデータ化している点を、一般的な3D地図サービスとの違いとして挙げています。
属性情報があることで、「木造の建物が密集している地区」や「一定以上の高さを持つ商業施設」などを条件で抽出できます。見た目の再現にとどまらず、分析やシミュレーションに使える点が、PLATEAUの3D都市モデルの大きな価値です。
オープンデータとして誰でも使える
整備された3D都市モデルは、オープンデータとして公開されています。データは、一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会が運用する「G空間情報センター」からダウンロードが可能です。
オープンライセンスを採用しており、研究開発だけでなく商用目的での二次利用も認められています。自治体の都市計画部門に限らず、民間企業や研究機関、個人の開発者まで、幅広い主体が活用できる仕組みです。
PLATEAUの3D都市モデルは、建物だけを立体化したデータではありません。複数の種類のデータを重ね合わせ、用途に応じた詳細度で整備されています。ここでは、3D都市モデルを構成するデータの種類と、詳細度を表す「LOD」、データ形式の「CityGML」について解説します。
3D都市モデルの仕組み|データの構成と詳細度(LOD)

PLATEAUの3D都市モデルは、建物だけを立体化したデータではありません。複数の種類のデータを重ね合わせ、用途に応じた詳細度で整備されています。ここでは、3D都市モデルを構成するデータの種類と、詳細度を表す「LOD」、データ形式の「CityGML」について解説します。
3D都市モデルを構成するデータ
3D都市モデルの基本的なデータセットは、建築物・道路・土地利用・災害リスク・都市計画決定情報・地形の6種類で構成されています。建物や道路の形状に加え、浸水想定区域などの災害リスク情報も、同じ空間上に重ねて扱える点が特徴です。
近年は対象範囲が広がり、都市設備や植生などのデータも整備できるようになりました。どのデータをどの詳細度で整備するかは、活用目的に応じて自治体ごとに決められます。
詳細度を示す「LOD」
3D都市モデルは、LOD(Level of Detail)と呼ばれる詳細度の区分で整備されます。LODはLOD0からLOD4までの5段階に定義されており、数字が大きいほど形状が詳しくなります。
| LOD | 表現の内容 | 主な対象範囲 |
| LOD0 | 建物の形状を平面で表現 | 広域 |
| LOD1 | 平面に一律の高さを与えた箱型の立体 | 都市全域 |
| LOD2 | 屋根の形状を含む立体。屋根・壁・底面を区分 | 地区や事業エリア |
| LOD3 | LOD2に窓や扉などの開口部を追加 | 個別の建物・構造物 |
| LOD4 | 建物の内部(屋内空間)まで表現 | 個別の建物・構造物 |
詳細度が上がるほど表現力は高まりますが、整備にかかる手間と費用も増えます。そのため、都市全域はLOD1で整備し、再開発エリアなどの重点地区のみLOD2やLOD3で整備する方法が一般的です。たとえば仙台市では、市域の約43%にあたる約341km²をLOD1で、都市再生緊急整備地域の約1.8km²をLOD2で整備しています。
国際標準のデータ形式「CityGML」
PLATEAUの3D都市モデルは「CityGML」というデータ形式で記述されています。CityGMLは、地理空間情報の国際標準化団体であるOGC(Open Geospatial Consortium)が定めた、3D都市モデルのための国際標準規格です。
国際標準の形式を採用しているため、国内外のさまざまなGISソフトやアプリケーションでデータを扱えます。また、国土交通省は整備の手順や仕様を「標準製品仕様書」として定めています。全国の自治体が共通の仕様で整備することで、都市をまたいだデータの比較や連携も可能になります。
3D都市モデルの整備における航空写真測量の役割

3D都市モデルは、ゼロから新しく測量して作るものではありません。自治体がすでに持っている地図データに、航空測量で得た高さや形状の情報を重ねて作られます。ここでは、3D都市モデルの整備で航空写真測量がどの工程を担っているのかを解説します。
3つのデータを掛け合わせて作られる
3D都市モデルは、主に次の3つのデータを掛け合わせて構築されます。
| データ | 内容 | 3D都市モデルでの役割 |
| 都市計画基本図 | 建物・道路・街区などの2次元の図形情報 | 建物の平面形状(外形線) |
| 航空測量データ | 建物や地形の高さ・形状の3次元情報 | 建物の高さ・屋根の形状 |
| 都市計画基礎調査 | 建物の現況や土地利用の現況 | 用途・構造などの属性情報 |
土台となる都市計画基本図は、自治体が都市計画のために整備している地図です。多くの自治体では、航空写真測量で作成した数値地形図を基本図として用いています。つまり航空写真測量は、高さ情報の取得だけでなく、3D都市モデルの平面的な土台づくりにも関わっています。
建物の高さと屋根の形状を取得する
国土交通省の標準製品仕様書では、LODごとに使用できる元データが定められています。LOD1とLOD2の建物の高さは、航空レーザー点群または航空写真から作成した点群を使って求めます。LOD2の屋根の形状も、同じく航空レーザ点群か航空写真の点群から作成します。
航空写真から点群を作る工程では、重なり合う写真を解析して地表や建物の三次元座標を求めます。空中三角測量で写真の位置と姿勢を正確に求めておくことが、高さ情報の精度を左右します。
空中三角測量の仕組みは、以下の記事でも詳しく解説しています。
空中三角測量の仕組みや原理とは?ドローンを使った写真測量のコツも解説!
航空写真をテクスチャとして使い見た目を再現する
LOD2の3D都市モデルでは、建物の表面に航空写真を貼り付ける「テクスチャ」が使われます。箱型のLOD1に比べて、屋根の色や建物の外観が実物に近い姿で再現される仕組みです。東京都の事例でも、LOD2の建物には空中写真をテクスチャとして付与しています。
テクスチャには、地形の歪みを補正した画像が求められます。真上から見た状態に補正したオルソ画像の技術が、3D都市モデルの見た目の品質にも直結します。オルソ画像の詳細は、以下の記事も参照してください。
オルソ画像とは?仕組みや活用事例・作成の流れをわかりやすく解説
3D都市モデルの主な活用分野

3D都市モデルは、防災・環境・まちづくり・モビリティなど、多様な分野で活用が進んでいます。国土交通省は、自治体や民間企業と連携して数多くの活用事例(ユースケース)を開発してきました。ここでは代表的な4つの分野について、具体的な事例とともに紹介します。
防災|浸水シミュレーションと避難計画
最も活用が進んでいる分野のひとつが防災です。3D都市モデルに浸水想定区域などの災害リスク情報を重ねると、浸水の深さを建物の高さと比べて立体的に把握できます。2次元のハザードマップでは伝わりにくかった危険度を、住民にも直感的に示せる点が強みです。
たとえば東京都板橋区では、時間とともに変化する浸水深と避難開始のタイミングに応じた避難ルートを、3D都市モデル上で表現する実証実験が行われました。浸水範囲が広がるにつれて避難行動が限られていく様子を、三次元で可視化しています。
環境・エネルギー|太陽光発電と熱環境の分析
建物の屋根の形状や向きが分かるLOD2のデータは、環境・エネルギー分野で活用されています。代表例が、建物ごとの太陽光発電のポテンシャル推計です。推計結果は、再生可能エネルギーの導入目標の策定や、住民への説明資料として使われています。
都市の暑さ対策にも活用が広がっています。ビル間の風の流れや排熱を考慮して、エリア単位の熱環境をシミュレーションする取り組みです。再開発や緑化の計画ごとに影響を比較し、空間設計の判断材料として利用されています。
まちづくり|行政手続きの効率化と合意形成
まちづくりの分野では、計画づくりや行政手続きでの活用が進んでいます。長野県茅野市では、都市計画や災害リスクなどの行政情報を3D都市モデルに集約し、土地開発の申請システムに活用する実証を行いました。開発事業者の申請負担と、行政側の事務作業の両方を軽くすることを目的としています。
再開発後の街並みを立体的に示せるため、住民との合意形成にも役立ちます。専門知識がない人にも完成後の姿が伝わりやすく、計画への理解を得やすくなる点が評価されています。
モビリティ・インフラ|自動運転や施設管理
詳細度の高いLOD3のデータは、道路の構造や建物の開口部まで表現できます。そのため、自動運転の支援やドローンの飛行ルート検討など、モビリティ分野での活用も期待されています。
インフラ分野では、都市施設の管理や地下埋設物の把握などへの活用が検討されています。3D都市モデルを共通の基盤として、さまざまな施設の情報を一元的に管理する取り組みです。
PLATEAUの今後の展望と課題

PLATEAUは実証の段階を終え、社会での本格的な定着を目指すフェーズに入っています。2026年7月には、今後の取り組み方針を示す「PLATEAUビジョン2026」が公表されました。ここでは、PLATEAUが目指す方向性と、普及に向けた課題を整理します。
PLATEAUビジョン2026が示す3つの重点項目
PLATEAUビジョン2026では、今後の取り組みにおける重要項目として次の3つが位置づけられています。
- データ整備・更新の効率化
- サービス実装のさらなる推進
- 国外への都市デジタルツインの展開
背景にあるのは、整備した3D都市モデルを一度きりで終わらせず、継続的に使い続ける仕組みづくりです。国土交通省は、モデルを導入する自治体の裾野を広げるとともに、都市政策の中で活用を定着させる必要があるとしています。
2027年度までに500都市の整備を目指す
国土交通省は、2027年度までに500都市で3D都市モデルを整備することを中長期の目標に掲げています。2025年度末時点の329都市から、さらに整備を加速させる計画です。
目標の達成に向けて、整備作業の効率化も進められています。AIなどを活用した3D都市モデルの自動生成ツールの開発は、その一例です。整備都市が増えるほど、元データとなる地図や高さ情報を効率よく、かつ正確に用意する技術の重要性も高まります。
普及に向けた課題
一方で、PLATEAUの普及にはいくつかの課題も指摘されています。2025年に開催された「PLATEAU全国会議」では、有識者から、3Dによる分かりやすさが従来の手法と比べて本当に優れているのか、検証が必要だという意見が出されました。
ツールの操作性も課題のひとつです。デジタルに不慣れな職員も含めた活用支援が必要だという提言もなされています。データを整備するだけでなく、更新を続けながら現場で使いこなせる体制をつくることが、今後の普及の鍵となります。
3D都市モデルの基盤となる航空写真測量なら「有限会社オオヤマグラフ」へ

PLATEAUの3D都市モデルは、都市計画基本図、航空測量で得た高さや形状の情報、航空写真のテクスチャなど、正確な地理空間データを土台に成り立っています。整備都市の拡大やデータ更新の効率化が進むほど、元となる測量データの品質が3D都市モデルの価値を左右します。
有限会社オオヤマグラフは、航空写真測量に特化した測量会社です。解析空中三角測量やオルソ画像の作成、数値地形図の作成まで、3D都市モデルの基盤となる地理空間データの整備に対応しています。
航空写真測量のさまざまな活用方法については、航空写真測量の活用事例5選もあわせてご覧ください。3D都市モデルの整備や更新に向けた測量のご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
